133:誕生日

 電車に関してもう一つ。何の教科の時間か忘れたが、先生が12両の客車とそれを引っ張る機関車の絵を黒板いっぱいに大きく描いたことがある。前の客車から順に、『1月』、『2月』と、『12月』まで書いた。「自分のお誕生日の車両に、名前を入れましょう」と先生が言った。私は自分の誕生日がいつか知らなかった。クラスの皆も知らないだろうに、座席を立って黒板にどんどん書き入れていくのを見て、私も黒板に近づき、一番良さそうに感じる1月の車両に『なかざわきりこ』と書いた。黒板の記入を確認していた先生が、「キリコちゃん、違うでしょう! キリコちゃんは3月やないの!」 私以外に叱られた子はほとんどいないようで、皆私のように適当に書いたのではなく、自分の誕生日を覚えていることに驚いた。
 小野先生から教わって、3月21日だとこのときしっかり覚えた。春分の日で国民の祝日であることもまもなく知った。当時はどの家も祝日に旗を門に掲げたので、『旗日[はたび]』ともいう。天皇誕生日と同等に国旗を掲揚する日なのだ! 春分の日は昼と夜の長さが同じ日だから年によって日が異なり、最近は3月20日のことも多いが、12歳の1959年(昭和34年)まではいつも21日だった。以後も91年(平成3年)までうるう年以外は21日だった。春分の日は日本だけの出来事ではない。世界中で昼と夜の長さが同じになるのだ! 私は自分の誕生日に根拠のない誇りを持ち、高校1年生のときクラス回覧のノートに、「私の好きな季節は春です。生の躍動を感じる春の中でも真っ盛りの日は春分の日です。私はその春分の日に生まれました」というような内容のナルシシスティックな文を書いたくらいである。年齢に2種類あることも知った。誕生日に年を取る満年齢と、正月に年を取る数え年。1月~4月1日生まれは同学年の4月2日~12月生まれより数え年が1年下であることなど、たちまち同級生より詳しくなった。