132:社会

 社会の授業では、教室で大恥をかいたことがある。「電車と自動車は、どっちの方が速いですか?」と小野先生が皆に質問して、私は手を挙げていないのに私を指名した。教室で発言するのが恥ずかしく、答えが分かっても滅多に手を挙げない子供だったから、私に発言の機会を与えようとしてくれたのだろうが、乗り物にも速さにも興味のない私は、どっちが速いか見当もつかない。とにかく答えなくてはいけないと思って、「自動車」と言った途端に男の子達から「ええ!」と非難の嵐が起きた。先生が、「自動車かて思い切り走ったら速いねんよ」とその場を収めてくれた。私は恥ずかしくて固まってしまった。
 女児と男児で乗り物に対する関心度が全く違うことを、息男が生まれて初めて知った。幼児期の息男は盆のような円い物を見つけるとすぐに自動車のハンドルに見立て、左右に回して運転し始める。ブロックで作る物もほとんど乗り物だ。2歳のときにおもちゃの電車とレール一式を私の母からもらって大喜びした。性にとらわれずに可能性を広げたいと考える私は息男に人形も買い与えたが、さっぱり興味を示さなかった。彼男が人形の腕をつかんで前後に振りながら運ぶのを見て、母は目を丸くした。「女の子やったらお人形さんをあんなかわいそな持ち方はせんえ。ほんまの赤ちゃんみたいにちゃんと抱っこしたげるのに、男の子は違うなあ。」 彼男にとって人形は生き物でなく、単なるおもちゃだから、人形が痛がったり苦しがったりするとは考えず、一番持ちやすい合理的な方法で運ぶのだ。人形の腕は彼男が握るのに丁度よい太さだった。女だけのきょうだいで育ち、子供も女だけの母にとって、たまに会う孫息男を理解するのは難しかったようだ。

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