129:ひび割れ

 鈴木さんといえば、いまだに後ろめたく思っていることがある。2年生のとき、教室で休み時間に鈴木さんの唇が乾燥してひび割れ、出血した。前の席にいた私は、「なめてたら血が止まるで」と助言した。周囲の子供達も「そうや。なめてよし」と言ったので、自分の助言の正確度に自信のなかった私はほっとした。傷口をなめて唾液で消毒する光景をいつか見たのを思い出して、思わず口をついて出た。次の授業中ずっと鈴木さんは舌でぺろぺろ唇をなめ続けていた。不安な私は帰宅するや母に真偽を確かめた。母は、「唇をなめたりしたらよけい乾いて、ひびがひどなるえ。」 私は鈴木さんに間違ったことを教えてしまった! 翌日彼女に謝ろうと思ったが、言い出す機会を逸した。その後も改まって謝罪する勇気が出ないうちに何ヵ月もたってしまい、進級時にクラス替えがあって、以後彼女と疎遠になってしまった。 人見知りの私は気後れして、その場で言うべきこと、すべきことをできなくなるときがしょっちゅうある。あのとき勇気を出して実行していれば相手に悪い印象を与えずにすんだのにと散々悔やみながら、次の機会が来てもみすみす棒に振り、後悔を繰り返す。

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