124:切符

 入学後数カ月たった頃、母が小野先生に、「キリコは小柄で小学生に見えへんさかい、電車の切符を買わんでも乗れんねん」と笑いながら言うのを横で聞いていて、私は慌てた。先生は正義の権化なのに、そんな不正行為を先生に暴露するなんて! しかし意外にも先生は母を批判することなく、ほほえみ返すだけだった。母は先生に丁寧語も使わない。誰とでもすぐに親しくなる母は、教師と保護者の関係もたちまち超えてしまう。大阪の大宝幼稚園のS先生とも気安く話していた。K幼稚園は在園期間が短くて先生達と懇意になる前に卒園したので、母の助太刀のない私は先生の目を自分に向けることができなかった。社交的な母は人見知りの強い私と大違いだ。私も年齢とともに自信が育ち、引っ込み思案から抜け出したが、母のように外向的な性格にはならず、今も孤独な時間を好む。

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