97:洗濯機2

 父が母に、「洗濯機かオルガンか、どっちがええ?」と尋ねたそうだ。母は電気洗濯機を見たことがなかったので、その威力が理解できていなかった。姉のいち子伯母に感化されて教育ママになりたい母は、気持ちがオルガンの方に傾き、芦屋の高級住宅地に住む叔母(私の大叔母)に相談した。
 『芦屋の叔母ちゃん』は私の祖父の末妹である。資産家に嫁いだので、井村家の親戚随一の金持ちだ。私は彼女の家でミキサーを初めて見た。バナナジュースを作ってもらい、こんなにおいしいジュースを飲むのは生まれて初めてだと思った。次にミキサーを見るのはその数年後で、近所の森田さんに、「ミキサーを買うたさかい、ニンジンジュースを作ったげるね。」 かつてのバナナジュースを思い出し、喜んで飲んでみたらまずくて飲み干すのがたいへんだった。子供の頃の私はニンジンが嫌いだったから。森田さん宅は我が家と同じレベルのサラリーマン家庭だが、新し物好きのようで、8ミリ映写機も持っており、家族を写した動画をふすまに見せてくれたこともある。

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